日本人類学会
日本人類学会Auxology分科会News Letter No. 1 (1994-8-1) より抜粋
本分科会は昨93年10月30日の日本人類学会総会で承認され,発足しました。そして本年3月12日に第1回のAuxology分科会総会と研究会が開催され,引き続いて,懇親会がもたれ,大勢の会員の参加をいただきました。また6月26−30日はハンガリーのSzombathelyという町で開かれた第7回Internationl Congress of Auxologyに本会の会員3名が口頭発表を,2名がボスター参加をしました。今後は国外の研究者と私たちが直接交流できるような機会をもてるよう努めたいと思います。
人類の進化,変異の研究にとって,時間因子を大きな柱とする成長研究Auxlogyは欠くことのでないものです。しかし,成長研究は生きた人間を直接の対象とするために他の分野にはない難しさがあります。とくにデータの収集や蓄積には,ヒトの寿命や成長期間が他の動物のそれらより長い時間を要するため,成長の研究はわが国の人類の中では顕著な存在ではありませんでした。
しかしこの50年を振り返ってみると,日米混血児,双生児などを対象とした成長の追跡調査の他に,国内のいくつかの地域で迫跡調査が行われてきました。これらは現在ようやく解析に着手できる段階に達しましたが,残念ながら研究者グループ間の有機的なつながりはありません。また,欧米では1960年代に成長研究の技術的な協定が結ばれ,統一したメソッドに則って研究が進められ,成果が発表されてきたのに,この点でわが国は大きな遅れをとったという事実は否定できません。さらに近年は私たちがアジア太平洋地域で調査をする機会が増えてきましたので。欧米の研究者だけではなく近隣の研究者との交流を真面目に考える時代を迎えています。日本の人類学に蓄積されている豊かな成長資料を知的産物としてより広い世界で認識してもらうためにも,研究者間の情報交換,討論を盛んにし,若い人達を育てていかねばなりません。
他方,成長は実は老化と連なる生命現象であり,広義のagingとしてとらえていく必要があります。ヒトの特徴として,生殖期前(成長)と生殖期後(老化)の期間が相対的に長いことが挙げられますが,これらのメカニズムを明らかにすることは,人類の足跡を辿り未来を思考する上でひとつのポイントになることはいうまでもありません。以上のような背景を考慮して,日本人類学会の中にAuxology分科会を設置し,人類学会会員だけではなく広い分野の研究者と共にこの分野の研究を推進させることは,わが国の生物人類学の発展のために意義あることと思われます。
第1章 総則
第1条本分科会(以下本会と略す)はAuxology分科会と称し,日本人類学会に属する。
第2条本会は成長研究の促進ならびに会員の間の情報交換,意志の疎通を計ることを目的として次の事業を行う。
1.分科会および総会の開催(少なくとも年1回)。
2.その他本会の目的を達するための事業。
第2章 会員
第3条本会は日本人類学会会員および人類学会会員以外で,本会の趣旨に賛同する者により構成される。会員は本会の事業遂行に必要な経費を納入する。
第4条会員は本会の事業に参加する。
第3章 組織および運営
第5条本会運営のために幹事若干名および代表幹事1名をおく。
第6条幹事は会員の郵送投票により決める。代表幹事は幹事の互選とする。代表幹事は選挙による幹事の他に2名以内の幹事を指名することができる。
幹事の任期は2年とする。
第7条本会の事業に関する方針,会計その他重要な事項は分科会の総会において決める。
第8条本細則の変更は会員の過半数の賛成を要する。
付則
1.代表幹事は,本会運営のために事務局担当を会員の中から委嘱することができる。
2.第3条に基づく会費は当分の間年額1,000円とする。
3.本会の事業年度は日本人類学会の会計年度に準ずる。
4.付則の変更は幹事会において審議し,分科会の総会に報告する。