1Auxology 分科会研究会 1994312日(土)大妻女子大学

 

 

 骨のリモデリング(再構築)

 

腰原 康子

 都老人研・生体情報

 

骨は,骨の吸収を行う破骨細胞と,骨の形成を行う骨芽細胞で絶えず代謝されており。一年間に20%の骨が新しく入れ変わるといわれている。既存骨を新生骨に置き換えることを骨のリモデリング(再構築)と呼んでいる。l984年Parfittによって報告された骨のリモデリングは,一つの骨表面に存在する個々の破骨細胞や骨芽細胞等が,機能的にひとつの生理的な単位として働き次のように行なわれる。通常骨表面は一層の休止期の骨芽細胞でおおわれている。カルシウム調節ホルモンや骨に負荷される力等の刺激により休止期骨芽細胞の細胞骨格が変化して立方化し,骨表面が露出する。

この骨表面に前破骨細胞が誘導され定着し,破骨細胞へと分化を開始する。さらに破骨細胞が活性化されると,骨表面を明帯でリング状に取り囲み,その内部に複雑な細胞突起からなる波状縁(ラッフルルド・ボーダー)がつくられ,活発な骨吸収を行なう。酸によるミネラルの溶解と吸収,ならびに加水分解酵素による有機物の消化および吸収で骨吸収は起こる。吸収を受けた骨表面では,この破骨細胞活性抑制物質の作用により細胞変換が起こる。破骨細胞は次第にその活性を失い,骨表面から遊離して骨吸収窩には単核貪食細胞が集合する。引き続き,骨芽細胞が骨吸収窩に集まってきて,骨基質を合成分泌し吸収窩を埋める。この非石灰化骨基質(類骨)は,成熟し石灰化して骨の形成が起こる。そして骨芽細胞は,骨細胞に分化して骨基質中に埋没する。一方骨表面は休止期骨芽細胞でおおわれる。

このように骨のリモデリングは活性化→骨吸収→細胞逆転期→骨形成期→休止期の順で行なわれ,約3ケ月間で一回転するゆっくりな代謝である。この骨のリモデリングの生理的特性を治療に応用している。1.25(OH)2D3投与で骨吸収を活性化し(Activate),カルシトニン投与で吸収を抑制し(Depress),これらの刺激から解放して微量の1.25(OH)2D3投与下で骨形成を充進させる(Free)。この方法を繰り返して行なう(Repeat)ことからそれぞれの頭文字をとってADFR療法と呼んでいる。