遺伝・環境要因と思春期の成長・栄養状態

   一南太平洋ソロモン諸島の3集団の比較-

 

○山内 太郎1,河辺 俊雄2, 大塚柳太郎1

  1東京大学大学院医学系研究科, 2 高崎経済大学大学院地域政策研究科

 

 

南太平洋ソロモン諸島国の思春期の少年少女(1318歳)479名を対象として身体計測を行い、社会経済的・遺伝的要因が成長・栄養状態におよぼす影響について比較検討した。メラネシアの2集団:農村(社会経済状態・低:LSES)と寄宿制中等学校(社会経済状態・高:HSES)そしてミクロネシア移住者の計3集団を対象とした。WHOの推奨にしたがい、米国国民栄養調査のリファレンスデータ(NCHS 2000)を用いて栄養状態を評価したところ、対象者の9割以上のBMI-2 Z-scoreを超えていた。次に「2 Z-score未満」の基準を用いて低栄養状態の者の割合をみてみると、男子ではstunting(身長)、underweight(体重)、thinnessBMI)の割合はメラネシア農村が最大でそれぞれ45.8%、34.7%、8.3%だった。中等学校生徒の割合(1491283.2%)はミクロネシアの少年(16.46.84.1%)と同程度であった。女子も男子と同じ傾向がみられたが、低栄香の割合は男子に比べて低かった。メラネシア中等学校生徒は、思春期の開始時(13歳)にはメラネシア農村の子どもより身長が高く、また体重も重かったが、年齢が上昇するにつれて差は縮まり思春期後期(1618歳)では両集団の体重、身長、BMIはほぼ等しくなった。一方、ミクロネシア農村の少年少女は、メラネシア農村集団より全ての年齢において(1318歳)一貫して身長が高く体重も重かった。

結果をまとめると、成長と栄養状態における遺伝要因の影響は思春期の全期間を通じて顕著にみられた。一方、社会経済的要因は思春期初期には観察されたものの、後期においては成長・栄養状態に反映されていなかった。これらの結果は、HSESの子どもはLSESより生まれたときから栄養環境に恵まれていたため思春期前の成長が早かったこと、また思春期後期にLSES群の成長がHSES群に追いついたというよりは、むしろHSES群の成長ペースが落ちた(あるいは成長遅延が起こっていた)ことを示唆している。


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