スプライン平滑化成長速度曲線による小児期・思春期スパートの解析

(c)Copyright 1996 高井省三・篠田謙一

この研究は体重,身長,座高,下肢長,肩幅,腰幅の小児期スパートと思春期スパートについての報告である。被験者は縦断的成長資料である「小城成長研究」からの約7,100人の児童・生徒から成っている。連続した2年間の計測データから単年成長速度(single-year vilocity)を求め,これを横断的にまとめて0.5歳ごとに中央値を求めた。この中央値を3次スプライン関数をはてはめて平滑化した。最良の平滑化成長速度曲線は赤池の情報量基準(AIC)を参考にして決定した。
明瞭な小児期スパートは,男子では身長,座高,下肢長の成長に出現した;女子では座高と腰幅の成長にしか出現しなかった。身長の思春期スパートについてみると,最大増加のタイミング(身長ピーク年齢)は男子で12.9歳,女子では11.0歳であった。ほかの縦断的資料による解析の例を参照すると,この身長ピーク年齢はここ20年間は変わっていない。欧米の数値と比べてみると,日本人児童・生徒のピーク年齢は欧州・米国白人児童よりも若い,つまり早熟であることが明らかである。
各項目のピーク年齢を見ると,男子では腰幅<下肢長<身長<座高<肩幅<体重の順であった;女子では下肢長<肩幅<身長<座高<腰幅<体重の順であった。男子では幅,長さの項目を対比させてみるといづれも尾側よりも頭側の成長テンポが早いという尾頭成長勾配(caudocephalic growth gradient)がある。男女差をピークのタイミングでみると,いづれのピークも女子が男子よりも若い年齢で現れていることが分かった。ピークの大きさで男女を比べると,差は下肢長で最も大きく腰幅で最も小さかった。
(筑波大学体育科学系紀要 14:119-130,1991)